厳格オカンと念力娘 ~ブライアン・デ・パルマ「キャリー」(1976年)
2007-03-25 17:00:00
噴火。
地震。
そして、怒り。
どれも、たまりにたまったエネルギーが、
こらえきれずに爆発したとき、おそろしい結果を呼びます。
この「キャリー」、そんな大爆発系の1本。
女子高生、キャリー(シシー・スペイセク)の爆発が見どころですが、
その前に、キャリーのオカン(パイパー・ローリー)が怖い。
みなさんの中学・高校時代も、クラスに必ず、
やたらと厳格な家、というのがあったと思います。
「門限は5時!」
「映画なんてとんでもない!」
そんな感じ。
キャリーのオカンは、それをさらに100倍にしたイメージです。
この、熱心なキリスト教徒のオカンにきびしく育てられたキャリー。
思いっきりオドオド、ビクビクした娘に成長します。
学校生活は、彼女にとって灰色の世界。
友達は、いません。
そんなキャリーですが、級友の気づかいで、クラスのイケメン、
トミーくんとダンス・パーティに出席することになりました。
怖いオカンに逆らって、口紅を塗り、ドレスを身にまとう。
しかし、そのパーティの席上、クラスの不良たちは、
公衆の面前でキャリーに大恥をかかせようと、
あるとんでもない計画を実行するのでした。
ここでついに、キャリーが爆発。
実は彼女、念力の持ち主だったのです。
彼女が叫べば、机や椅子が宙に舞い、至るところに火の手が上がる。
長年つもりつもったキャリーの怒りがついに放たれるこのシーンを、
デ・パルマ監督は優美なスローモーションを多用し、
独自の映像美学で描いています。
なかなか一見の価値ありです。
さて。
まあ、話は落ち着くところに落ち着いて、一件落着。
そう思ったところで、あっと驚くショッキングな演出が!
最後の最後まで、気を抜かずにご覧下さいませ。
余談ですが。
ひ弱な念力娘、キャリーをこのうえなく見事に演じ切った
シシー・スペイセク、どう見ても、うん、高校生!
なんですが、実は当時、27歳だったとか。
「バベル」で高校生役の菊地凛子さんももう26歳だそうですが、
なかなかいい勝負のような気がします。
見比べてみるのも、おもしろそうですよ。
Category : 即死!ひとり見厳禁復讐!逆ギレ娘 ~西河克己「霧の旗」(1977年)
2007-03-21 17:00:00
復讐。
この世でもっとも恐ろしいもののひとつでしょう。
そんなことをしても起こってしまったことが元通りになるわけではない、
そう分かっていても、復讐せずにいられない。
そんな人間の心の動きを描いた作品です。
原作は松本清張。主演は70年代を代表するアイドル、山口百恵。
九州で起こったある事件。
小学校教師(関口宏)が、金貸しの老婆を殺した容疑で逮捕されました。
兄の無実を信じる妹(山口百恵)は、
東京の高名な弁護士(三国連太郎)に弁護を依頼。
しかし、多忙な弁護士は、貧乏な娘の依頼をすげなく却下。
結果、関口宏はロクな弁護も受けられず、獄死してしまうのです。
2年後、上京してホステスとして働いていた山口百恵は、
ひょんなことから三国連太郎の弁護士へとつながる
人脈のルートを発見。
そして、三国連太郎の恋人がある事件に巻き込まれたとき、
現場に居合わせたのです。
山口百恵が証言をすれば、女は救われる。
しかしその女は、かつて自分の兄の弁護を断り、
死へと追いやった張本人の恋人。
そんな相手を、果たして救うことができるものでしょうか?
まあ、はっきりいって、三国連太郎にしてみれば、
不運としかいいようがないのです。
弁護をしなかったのは事実としても、弁護士はほかにも
いっぱいいるのだし、憎まれるのは筋違い。
逆恨み、といってもいいでしょう。
しかし、当時18歳とはとても思えないほどどろどろしたものを
抱える山口百恵、奇妙な説得力があります。
アイドルにこんな役やらせていいの?
と心配しちゃいますが、持ち前の(?)かげりのある雰囲気が、
復讐に燃える女にぴったりなのですね、これが。
三国は、豪雨の中、公園で山口に土下座をして謝ります。
ふつうなら、ここで「勝った!」と判断して、
許してやりそうなもんですが、
そこから先がまた、ぞーっとするほどこわいんです。
ぜひ、ご自分の目をくわっと見開いて、ご確認あれ。
なお、同じ原作が、山田洋次監督、倍賞千恵子主演によって
映画化されています(1965年)。
こちらもDVDが出ていますので、見比べるのも一興かと。
Category : 激コワ!覚悟はいかが?家族、親族、油断禁物 ~三隅研次「女系家族」(1963年)
2007-03-15 17:00:00
わたくし関東モンなので微妙なニュアンスが分からないのですが、
関西的なコワさってのが、ときどき、ありますね。
この「女系家族」、いわばそういった、関西系ファミリー・ホラーです。
(以下、ラップ風に)
Yo!
舞台は、大阪、老舗商店!
そこのご主人、ぽっくり昇天!
親族一同、ビックリ仰天!
娘三人、すっかり動転!
(ここまで)
えー。
娘たちの母である、主人の妻はすでに亡くなっていたため、
本来なら、相続権は娘たち(京マチ子など)にあります。
ところが、大番頭(中村鴈治郎)が主人の遺言を読み上げると……
なんと、亡くなった主人には愛人(若尾文子)がいたと分かります。
もし子供でもできていようものなら、
莫大な遺産の半分はそちらに行ってしまう。
そうはさせじと、三姉妹、番頭、叔母(浪花千栄子)、踊りの師匠(田宮二郎)
などがぐちゃぐちゃに入り乱れての遺産争奪戦が始まります。
親戚だから、家族だから、なんて遠慮は一切なし。
がめつく、えげつなく、もらったモンの勝ちやでー、
というわけで、ひとの箪笥はかき回すわ、
美術品はこっそり隠すわ、店の財産は横流しするわ。
それこそ、家中全員犯罪者、くらいの勢いです。
見どころはなんといっても、大番頭の中村鴈治郎(中村玉緒のお父上)と
叔母の浪花千栄子のやり取り。
「腹黒い」だとか、「腹の探りあい」といった言葉はこのふたりのために
あるのでは、と思ってしまうほど。
都合の悪い話になると急に耳が遠くなるという、
鴈治郎のオトボケぶりが最高です。
対して、浪花千栄子の行動はとにかくストレート。
あいさつに来た愛人・若尾文子の腹部をにらみつけ、
羽織の上から、「ややこがおるのんちゃいますか!」
と見破ってしまいます。
おそるべき眼力。
(「めぢから」ではなく「がんりょく」)
浪花が若尾あややにするとんでもない仕打ち、
そして、あややの鮮やかな反撃については、説明は差し控えておきます。
ぜひみなさまの目でご確認を。
古き良き富裕階級ならではの、ゴージャスな和服の着こなしは
目に美しいことこのうえなし。
そんなひとたちが欲に駆られて、
エゴをむき出しでのた打ち回るのですから、おもしろくないはずがない。
というわけで、今回いちばんこわいのは、「人間」でありました。
Category : 激コワ!覚悟はいかが?長いものには巻かれろ! ~デイヴィッド・R・エリス「スネーク・フライト」 (2006年)
2007-03-09 17:00:00
今回は直球で行きます。
どんな映画か、まずはそこからご説明。
はじまりは、ハワイ。
山道をバイクで飛ばしていた青年が、偶然、マフィアの殺人現場を目撃。
彼は証言を求められ、FBIの捜査官に護衛されて、
空路、LAに向かいます。
そうはさせじと、マフィアは、青年殺害のため、数千匹の毒ヘビを機内に放ちます。
大量のヘビと、捜査官(サミュエル・L・ジャクソン)たちとの戦いが勃発!
いやー、なんでこんなに興奮するんでしょうか、この映画。
密閉空間+空中飛行+恐怖生物+大量発生+高速移動、と、
シチュエーションとしては怖くなる要素をムダにたくさん
含んでおきながら、ドキッとする場面は2、3箇所。
いや、怖いっちゃあ怖いんですよ。
頭から丸呑みにされたりしますし。
のど笛に食いついてきますし。
狭い隙間から這い出てきますし。
ただ、死体がごろごろ転がっていても、どうも、ふざけ半分な感じ。
もちろん、こうした映画の場合、一生懸命、本気でふざけることこそが
マジメな態度なのだと思います。
飛行機にはよく、非常時に自動的に頭の上からおりてくる酸素マスクが
備え付けられていますが、そのマスクと一緒に、
機内にいっせいにヘビが降り注いでくるところなど、
「そうこなくっちゃ!」
と思わず拍手喝采したくなるほどです。
(誰に? ヘビに?)
そういう「お約束」な映画ですから、
パイロットが無事でいられるはずはありません。
副操縦士ともどもヘビの襲撃を受けて、ダウン。
機内にはヘビがウヨウヨ、飛行機は墜落しかかってフラフラ。
とまあ、こういう具合になります。
いかにもB級映画らしい、痛快な(安易な?)解決方法でもって
ヘビは退治され、飛行機は無事に着陸してしまうわけですが。
そこで「ありえねぇ!」と激怒するようなひとは、
きっとこの作品に向いてなかったひとです。
ごめんなさいね。
そもそも、ヘビが飛行機にウヨウヨする映画に、
人生の教訓やなにかを求めてはいけません。
ただし、1時間半のヒマつぶしとしては、まずこれ以上のものを
望んでは、バチがあたるといえましょう。
Category : 余裕!お子様でもOK横わけの殺人者 ~森一生「ある殺し屋」(1967年)
2007-03-06 17:00:00
名前はよく耳にするけれど、本当のところはどんな感じなのか、
よく分からない職業。
その筆頭に挙げられるのが、「殺し屋」でしょう。
ベテラン監督、森一生の代表作のひとつであるこの映画。
主演は、時代劇を中心に活躍した市川雷蔵。
37歳の若さで亡くなっており、いまでも根強いファンを持つスタアです。
さて、雷様(「らいさま」とお読みください)扮する主人公、
殺し屋といっても、ヤクザやはぐれ者ではありません。
なんと、ふだんは小ぢんまりとした小料理屋の主人。
髪を七・三に整えた、横わけハンサムなのです。
殺し屋としても天才的な腕を持ちながら、
自分の意に染まぬ依頼は決して受けようとしない。
そして、引き受けても、自分の納得行くやり方でしか仕事をしない。
まあ、なんというか、殺し屋界のブラックジャック的存在。
さて、この作品では、雷様が殺しを引き受けるわけですが。
そこにあらわれた小悪党がふたり。
食い逃げしかかっていたところを雷様に拾われた女(野川由美子)と、
雷様に仕事を依頼してきた組の男(成田三樹夫)。
雷様にウザがられながらも、雷様に惚れこみ、つきまとうふたり。
とはいえそこは小悪党ですから、惚れこみつつも、
隙あらば出し抜こうとケチな作戦をくわだてます。
まあ、雷様はそんなことはとっくにお見通しなわけで、
さて、どうなりますことやら。
なんといっても、小料理屋と殺し屋という、
表と裏のふたつの顔を持つ雷蔵のクールさがたまらない1本です。
カメラも音楽もどことなくヨーロッパ風のテイストをかもしだしていて、
確実に昭和の香りを漂わせながら、それでいてバタくさい。
おしゃれ映画に分類してもいいと思います。
小料理屋だけど。
見どころのおまけとしては、小料理屋のお手伝いさんにご注目。
若き日の小林幸子さんが働いています。
いまとは違った地味なお姿にびっくりすること間違いなし。
また、続篇として「ある殺し屋の鍵」も製作されています。
こちらでは、雷様の本職は日本舞踊の師匠。
どうぞ、2本あわせて、ご堪能くださいませ。
Category : 余裕!お子様でもOK渡る世間は…… ~ケヴィン・ウィリアムソン「鬼教師ミセス・ティングル」 (1999年)
2007-03-01 17:00:00
最近あんまり見かけなくないですか、「鬼」。
いや、とはいっても、昔は道端でよく出くわしたとか、そういうんじゃないですけど。
軍隊に入れば鬼軍曹が、スポーツをすれば鬼コーチが、
TVをつければ鬼束ちひろが。
日常のあらゆるシーンに「鬼」が欠かせなかった気がします。
そんなわけで、今回は、もはや絶滅寸前の希少種、
「鬼教師」の映画です。
舞台はとある高校。
主人公は、奨学金をゲットして進学を狙う乙女、リー・アン。
そのためには、歴史の課題でAをとることが必須の条件。
ところが歴史を担当しているのは、
きびしいことで有名な鬼教師、ティングル先生。
これは絶望的。
なんとか思い直してもらおうと、リー・アンが
女優志望の親友のジョー・リンと相談していると、
現れたのが落ちこぼれのルーク君。
彼が手に持っていたのは、なんと盗み出した歴史の試験問題!
そこをタイミング悪く、ティングル先生に見つかってしまいます。
誤解です、単位を下さい、先生!
と、3人は先生の家まで直訴しに行きます。
ところがさすがは鬼教師、取り付く島もない。
するとこの3人、こともあろうに、先生をベッドに縛りつけ、
監禁してしまいました。
こうして見ると、どっちが鬼だか分かりゃしませんが、
そこは百戦錬磨のティングル先生。
身動きとれずとも、お口は達者。
ジョー・リンがルークに惚れているのを見抜くと、
リー・アンとルークの仲をほのめかして仲間割れを画策。
巧みな話術で、ジョー・リンを味方につけようとします。
ティングル先生が縛られているのをほどいて脱出、
なんてお決まりのシーンもきちんと用意されていて、
で、まあ、先生と生徒のこの「鬼ごっこ」、
どっちが勝つかはぜひ実際にご確認ください。
ところで、この作品の見どころは、まさにそのユルコワ具合にあります。
監督のウィリアムソンさんは、
「ラストサマー」「スクリーム」などで、青春+ホラーという
ジャンルを築いた脚本家。
本作もその延長線上。
3人の生徒たちの恋愛模様と、
ティングル先生監禁事件(バリバリ犯罪ですよね)、
いったいどっちが大事なのよ?
とツッコミを入れたくなるムードで話は進んでいきます。
マジメに見てると腹が立つかもしれませんから、
巨大なポップコーンとコカコーラでも用意して、
気分はアメリカのハイスクール!
Yeah!
Wow!
って感じでご鑑賞なさるのが正しいかと。
ヤボなことは言いっこなしってことで、ひとつ、よろしく。
Category : プチコワ!カップル向け山椒は小粒でピリリと怖い ~スタンリー・キューブリック「非情の罠」(1955年)
2007-02-26 17:00:00
スタンリー・キューブリックといえば、大監督です。
「2001年宇宙の旅」がおなじみですが、
「時計じかけのオレンジ」、「シャイニング」、
「フルメタル・ジャケット」、「博士の異常な愛情」など、
おっかない映画もいっぱい撮っているひと。
ここいらへんの名作は、いろんなところで紹介されていますし、
すでにご覧になっている方も多いでしょう。
ですので、今回は、この巨匠の初期作品をとりあげてみます。
たしかまだ、日本では、キューブリックではなく
カブリックと呼ばれていたころの1本。
主人公は、ボクサーのデイヴィと、ダンスホールで働くグロリア。
試合に負けて落ち目の彼と、店長に言い寄られてうんざりの彼女。
同じアパートに住むこのふたりは、ふとしたことで知り合い、
たちまち恋に落ちます。
心機一転のため一緒に街を出ようと、先立つものの工面を開始します。
お金ができたら、手に手をとって列車に飛び乗ろうというわけ。
ところが、ダンスホールの店長の画策で、
デイヴィは殺人の容疑をかけられ、グロリアは誘拐されてしまう。
救出に向かったデイヴィは逆につかまる始末。
命からがら脱出し、必死で逃げる彼。
追ってくる店長の手下たち。
ここの逃走シーンの緊迫感、なかなかのものです。
ようやく、大量のマネキンが(なぜか)置いてある一角に
逃げ込んだデイヴィ。
やってきた追っ手は、なぜかそこにあった斧(笑)を
ブンブン振り回して襲い掛かってきます。
デイヴィは棒を使って全力で応戦。
斧 vs. 棒。
手に汗握るバトルが繰り広げられます。
で、その結末は……
上映時間67分と小粒なこの作品。
のちのちの巨匠ぶりを予感させる才能が、
いたるところでキラリと光っています。
とにかく短くて、ムダがないサスペンス。
レンタル屋さんで「物足りないなぁー、なんかもう1本!」
というとき、付け合わせ的に借りてみてはいかがでしょうか。
余談です。
この作品、初公開時には67分ではなく、
そこから20分以上もカットされていたのだそう。
いったいどこを、と思ってしまいますが。
現在出回っているDVDは67分の完全版ですので、
どうぞご安心を。
Category : ややコワ!ご用心地味だけど、不死身。 ~塚本晋也「鉄男~TETSUO THE IRON MAN~」(1989年)
2007-02-21 17:00:00
怖いことは、怖い。
ただし、それよりも、むやみやたらなパワーに圧倒されます。
好き嫌いが分かれる作品ですが、一度ツボにはまったひとにとっては、
生涯忘れられないかもしれません。
そんな強力な1本です。
直球まっすぐストレートなタイトルがあらわすとおり、
とにもかくにもこの映画、主人公の男(田口トモロヲ)の体が
鉄に侵蝕されていく有様を描いています。
きっかけは、ある日、“ヤツ”をひき逃げしてしまったこと。
ひき逃げ後、男のほっぺたに金属のニキビが出現。
そこをとっかかりにして、次第に肉体が金属化していきます。
怒りと悲しみにくれ、街を放浪する主人公。
そうこうしているうちに、体の大半が鉄になります。
そして彼の前に、ひき逃げしたはずの“ヤツ”が登場。
“ヤツ”もまた、金属化した体を持っています。
ふたりの鉄男のバトルがここに勃発!
とまあ、お話はだいたいこんな具合です。
が。
そのへんは、あまり気にしなくてもよろしいかと。
味わうべきは、都市にちらばる金属製の廃物をかたっぱしから
身にまとったような、鉄男の見てくれです。
かなり不気味でありつつ、同時に、
究極の進化を遂げた未来の人間像のようでもある。
(だとしたら、ヤですけど)
低予算のモノクロ作品につき、鉄男の造型はすべて実写。
CGもワイヤーアクションもなし。
ローテクな特撮ですべてがまかなわれており、
その手作り感に、妙な興奮と恐怖をかきたてられます。
ちょっとアレなたとえですが、ヘアヌードよりも
風にめくれたスカートからのぞいた太もものほうに
萌えるような感じ、といえましょうか。
とことんグロテスクなのに、ところどころ大爆笑もできる、
ある意味お得なこの映画。
ミニシアターで意外なヒットを飛ばし、
ローマ国際ファンタスティック映画祭ではグランプリを獲得。
塚本監督の出世作となりました。
あのタランティーノ監督もファンのひとりなんだとか。
余談です。
自分の中ではこれ、「最近の映画」っていうくくりなんですが、
考えてみたら、20年近くも前なんですね。
作中に出てくる黒電話に、なつかしさを覚えました。
Category : ややコワ!ご用心たらーり、あぶら汗 ~アンリ=ジョルジュ・クルーゾー「恐怖の報酬」(1952年)
2007-02-16 17:00:00
ここのところちょっと小難しい系のものが続いていますので、
今回はガツンとストレートなやつをご紹介。
犯罪映画やスリラーに腕を奮ったフランスの監督、
クルーゾーの代表作の1本です。
タイトルからしてなにやら男くさくてカッコイイんですが、
あらすじというか、設定を聞くだけでわくわくするような映画です。
舞台は南米の田舎町。
本国で食いつめて流れてきた男たちが、仕事もなく金もなく、
故郷に帰ることもできずに、たむろしています。
そこに飛び込んできたニュース。
500Km先の油田で大火災が発生。
それを消すために、あるものを運ばなくてはならなくなりました。
報酬は大枚、2000ドル!
当然、町中の男たちがずらりと面接の列に並びます。
しかし、仕事とは、大量のニトログリセリンの運搬。
ニトロといえば、ちょっとした衝撃で爆発する危険物。
そんなおっかない薬を、安全装置もないふつうのトラック2台で
運ばなくてはならないのです。
選ばれたのは、マリオ(イヴ・モンタン)をはじめとした4人。
となると、
ジャングルを爆走するトラック!
襲いかかる原住民!
ブーツの中に侵入するサソリ!
みたいなものを想像するかもしれませんが、
クルーゾー監督、ちょっとひとひねり。
なにしろ、なかなかトラックが出発しない。
そのかわり、行き詰った男たちのやるせない暮らしを
たっぷり描写。
いざトラックが出発しても、爽快感あふれる爆走シーンは
ほとんどなし。
あんまり乱暴な運転したら、即、ドカーン、ですから。
大量のニトロのかもしだす恐怖もさることながら、
その背後に描かれる、流れ者たちの人生の切なさが
この映画の最大の魅力でしょう。
危機一髪の瞬間を乗り越え、全身油まみれになる
主人公、マリオ。
彼が受け取った恐怖の報酬とは、はたして……?
見ているといつのまにかあぶら汗が吹き出てくること、
間違いなし。
あまりにやるせない衝撃のラストまで、
目が離せないことをお約束しましょう。
Category : ややコワ!ご用心みんなのいえ ~大島渚「儀式」(1971年)
2007-02-11 17:00:00
のっけからナンですが、この映画の怖さの判定は、
難しいです。
本当にぞっとするような作品と感じるひともいるでしょうし、
ひとによっては最初から最後まで大爆笑の連続、
かもしれません。
どっちが正しくてどっちが間違い、ということはなく、
そういう1本。
とにもかくにも、「問題作」には違いありません。
舞台は、地方のとある旧家、桜田家。
絶対的権力を持つ祖父・一臣(佐藤慶)のもと、
由緒正しい家柄が、代々続いています。
ある者は重圧に耐えかねて家を飛び出し、
残った者は、家の存続、というか、体面をたもつことを
最優先事項として行動しています。
右翼も左翼も、この「家」に守られていれば、
ぬくぬくと過ごすことができる、そんな「家」。
「家」さえ守られるならば、近親相姦、政略結婚、
なんでもありです。
ぐちゃぐちゃで、どろどろで、なあなあ。
その結果としての、ぬくぬく。
大島監督が、この一家の奇妙なありさまを通して、
戦後の日本社会を描いていることは明白ですが、
それでもなお、強烈なオーラを放ち続ける1本です。
いちばん印象深いのは、満洲男(河原崎健三)の披露宴。
桜田家の儀式ですから、当然、本人の意思の介在する
余地など皆無。
結婚相手から列席者の顔ぶれまで、すべてが祖父の支配下。
ところが、当日になって、花嫁が消えてしまいます。
そりゃそうでしょう。
誰だって桜田家のヨメなどなりたくないに決まっています。
で、どうなったか。
花嫁不在のまま、披露宴は決行されます。
透明人間の花嫁がそこにいるかのように、
満洲男がひとりでおめでたい席に立つのです。
この映画、全部がぜんぶ、こんな調子。
不条理コントのようでありつつも、同時に、
重苦しいものをど真ん中に投げつけて来る。
怖いのは、本質の部分では、わたしたちはみんな、
この桜田家のひとびととどこかで地続きであるという事実。
つまり、ときには爆笑しつつ、ときには恐怖に身をよじらせる、
そんな見方がいちばんふさわしい作品なのかもしれません。
「たまには変わったものが食いてぇー!」
というあなた。
どうですか、この珍味を味わってみては。
「怖いもの見たさ」とは、この映画こそにふさわしい称号でしょう。
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