たったひとりの反乱 ~ジェームズ・マクティーグ「Vフォー・ヴェンデッタ」(2005年)

2007-02-05 17:00:00

ひとつだけなら、なんの変哲もない単語。

それがふたつくっついて、面白い語感になることがあります。

たとえば、「メイド」+「カフェ」。

または、「恐怖」+「新聞」とかね。

 

わたしにとっての、そんなことばのひとつが、

「恐怖政治」。

こわいんだけど、笑っちゃう。ユルコワ。

今回は、そんな恐怖政治のおこなわれている世界の話。

 

舞台は、近未来のイギリス。

アメリカは暴動で無政府状態化しており、

「アメリカガス臭国」などと皮肉られている始末。

イギリスでは、サトラー議長が権利を掌握。

夜間の外出禁止、情報操作、秘密警察による監視などで

人民を支配する、超管理社会です。

 

ある晩。

主人公のイヴィー(ナタリー・ポートマン)は秘かに外出して、

秘密警察に見つかってしまいます。

そのピンチを救ったのが、謎の男、「V」(ヒューゴ・ウィーヴィング)。

このV、17世紀のテロリスト、ガイ・フォークスの仮面をつけています。

 

往年のガイ・フォークス同様、Vも破壊・殺人活動を繰り広げ、

国民に決起を呼びかけます。

「1年後、国会議事堂の前に集まろう」と。

そう、Vは、たったひとりで国家に反旗をひるがえしている男。

 

このV、かなりユニークな存在。

イヴィーを助けたものの、正体がバレるのをおそれて、

豪勢な屋敷に彼女を軟禁。

一緒に暮して、鼻唄を歌いつつ料理までしてあげるのに、

仮面は最後までつけたまま。

イヴィーにだけではなく、観客に向かってもです。

 

1年後、Vの計画は成就するや否や。

それは見てのお楽しみです。

 

この映画、原作はイギリスのコミック。

脚本は「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟が担当。

つまり、

「現実にはありえなそうだけどカッコイイ展開」+

「よく分からないけど意味深なセリフ」

という構図。

 

ところで、公開時のキャッチコピーは、

「人民が政府を恐れるのではない 政府が人民を恐れるのだ」

というものでした。

サトラーは悪者で、それに立ち向かうVは正義の味方。

映画だと、往々にしてそうした単純化がなされがちですが。

見ていると、ふと背筋が寒くなります。

「ていうか、これって、テロリストっていうんじゃね?」と。

 

たとえていうなら、無法者が街を荒らしまわっているとき、

その悪者を銃で撃ち殺すことは是か、非か。

そんな堂々巡りの質問にも似たものをつきつけてくる感じ。

 

気軽に楽しめるヒーローものの仮面をかぶっていながら、

その下には、ぞっとするような素顔。

そんな、ちょっとひねった魅力の1本です。

Category : ややコワ!ご用心

君ほほえめば ~リチャード・ドナー「オーメン」(1976年)

2007-02-01 17:00:00

とくに怖い映画に興味のないひとでも、

この映画の主人公の「ダミアン」という名前と、

悪魔の数字「666」には見覚え、聞き覚えがあるのでは。

もし、「怖い名前の殿堂」なんてものがあるとしたら、

貞子、ジェイソン、フレディなどと並んで、

子供ながら堂々の殿堂入り、間違いなし。

それが、ダミアン。

 

シンプルなストーリーの中に、怖さがぎゅうっと凝縮されています。

主人公の外交官夫妻を演じるのは、グレゴリー・ペックとリー・レミック。

子供を死産で亡くしたこの夫婦、同じ日の同じ時間に生まれた

男の子を譲り受けます。

ところがこの赤ちゃん、実は、悪魔の子だったのです。

それが、ダミアン。

 

とはいえ、ダミアン自身は、いたってかわいい坊や。

キバを剥いたり、ドギツイ色の光線を発したり、突然巨大化したりは

決してしません。

しかし、ダミアンが動物園に行けばキリンたちは逃げ出し、

サルは興奮して襲いかかる。

ケモノの勘はバカにできません。

 

詳しくは触れませんけれども、ダミアンの周囲の大人たちが

次々に不審な死を遂げていく、この過程はかなりショッキング。

現代のスプラッターのように血が飛び散ったりはせず、

その分、品の良い怖さがあります。

 

それにしても、ダミアン。

顔はかわいらしいのに、そのほほえみの表情は、

まぎれもなく悪魔。

よくもこんな子供を見つけてきたものだ、と感心、感心。

 

お父さんを演じるグレゴリー・ペックが、またいいんですよ。

神父に忠告を受けても、最初は、ダミアンが悪魔の子だとは

なかなか信じられない。

それはそうですよね。

しかし最後には、ダミアンにナイフを振り下ろす。

葛藤を見事にあらわす名演技です。

 

これはもう、現代の古典といっていいでしょう。

見て、震えてください。

Category : 即死!ひとり見厳禁

本当の戦争の話をしよう ~増村保造「赤い天使」(1966年)

2007-01-30 17:00:00

大ヒットを続けている、クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」。

ご覧になったみなさんも多いことと思います。

わたしも見ましたが、どうももどかしさが残りました。

アメリカ人が手袋をして握ったSushiを、

ナイフとフォークで食べさせられているような感じ。

 

で、今回は、日本人の、日本人による戦争映画をご紹介しましょう。

監督は増村保造。

東大を一度出たあとまた入り直し、2回も卒業した、すごいおひとです。

主演は若尾文子。

増村とは、20作品でコンビを組んでおり、そのほとんどが傑作です。

 

さて、この「赤い天使」、舞台は第2次大戦中の中国戦線です。

若尾が演じるのは、野戦病院の看護婦、西さくら。

前線で傷ついた兵士たちが次々に運び込まれてくる場所。

しかし、ロクにベッドもない、薬もない、人手もない。

ではどうするか?

 

助かりそうな者には最小限の治療をほどこし、

助からない者は、見捨てるのです。

で、その最小限の治療、とは?

 

体の中に入った弾を摘出したり(麻酔なし)、

壊死した手足をノコギリでギコギコ切り落としたり(麻酔なし!)。

モノクロ画面なのに、血の色が目に焼きつきそうなほど。

まるで物体のように横たわる兵士たち、

角材かなにかのように積み上げられた死体。

背筋が震えます。

 

そんな壮絶な日々の中、さくらは、手を失った兵士(川津祐介)の

性の処理を手伝ったり、軍医(芦田伸介)と恋に落ちたりと、

おそるべき生命力のうごめきを見せます。

ひとりの看護婦を超え、ひとりの女を超え、

それはまるで、若尾文子という一種の生物のように。

 

戦争ですから、バタバタとひとが死んでいきます。

兵士たちが死に、軍医が死に、目をかけていた若い看護婦が死ぬ。

それでもさくらは生き残ってしまいます。

生き延びれば生き延びるほど、それが異常な出来事であると

気付かされる場所、それが戦場なのです。

 

これに比べれば、イーストウッドの描く戦争は、

さしてこわくない、ママゴトの世界のように思えてきます。

わたしはさっき、「日本人の、日本人による戦争映画」と書きました。

この映画を、そしてほかの数々の日本の戦争映画を、

「日本人のためだけのもの」にしておくのはもったいないし、

また、よくないことだ、と強く感じます。

Category : 激コワ!覚悟はいかが?

幸福という名の恐怖 ~アニエス・ヴァルダ「幸福 <しあわせ>」(1965年)

2007-01-25 17:00:00

「バカヤロウ」が愛の言葉だったり。

「愛してる」とささやきつつ、実は愛してなかったり。

「君には大いに期待しとるんだよ」と喜ばせといて、

水面下では左遷の準備を進めていたり(上司)。

世の中、なかなか見かけどおりには動いていないみたいですが。

 

この、「幸福 <しあわせ>」と題された短い映画もそんな1本。

タイトルどおり、とある一家の幸福な日常を描いています。

しかし。

これは、なかなかにおそろしい作品。

 

主人公は、建具屋で働く青年。

自宅で洋裁をやっている奥さんと、かわいいふたりの子供。

物語は、4人が森にピクニックに行くところから始まります。

 

揺れるひまわり。

暖かい日差しとさわやかな風に眠気を誘われる夫婦。

子供たちは蚊帳の中でお昼寝です。

バスケットにはパンとワイン。

これが幸福なのだ、といわれれば、なるほど、うなずくしかない光景。

 

あるとき、青年はよその町に出張に出かけます。

そして、そこの郵便局で勤める娘と仲良くなります。

聞けば彼女、今度、青年の住む町に転勤になるのだとか。

繰り返されるデート。

よくある話です。

 

さて、この映画はいわゆるミステリー、謎解きものではありませんが、

ここから先に起こったことに触れると、

これからご覧になるみなさんの楽しみと恐怖とを台無しにしてしまう

おそれがあります。

 

ですから、この映画で起こらないことを、いくつか書いてみます。

 

まず、本妻と浮気相手がはちあわせしたり、

ののしりあったりすることはありません。

登場人物が声を荒げたり、暴力を振るったりすることも一切なし。

銃も刃物も、出てきません。

血も流れません。

だましあいや、かけひきもなし。

 

それじゃあどこがこわいのか、と疑問に思われることでしょう。

そこはやはり、みなさんがご自分の目でたしかめていただかないと!

 

おしまいは、はじまりとよく似ています。

見るからに幸せそうな一家が森を訪れ、並んで歩き去っていく後ろ姿。

このうえなくのどかなラストシーン。

それでいて、見ていて背筋が凍りつくようなのでした。

Category : 激コワ!覚悟はいかが?

クセになる怖さ ~カール・ドライヤー「吸血鬼」(1932年)

2007-01-20 17:00:00

あの故・淀川長治先生が、「あらゆる吸血鬼映画の中の最高傑作」と

絶賛するのが、この映画です。

監督はデンマーク出身の、カール・ドライヤー。

やはり先生によれば、「映画の美文家」だそうで。

デンマークと映画。

あまり、イメージが浮かんできませんよね。

なにかこう、霧の中にもやもやっとしたような感じで。

 

先生がこれだけ持ち上げるのだから、さぞこわいハズ。

鎌を持った吸血鬼が大暴れしたり、

血がそこいらじゅうに飛び散ったり、死体が村中に積みあがったり。

……と、不純な動機で借りてきたこのDVD。

(スミマセン。最近、怖い映画のことしか考えられなくなってますので)

 

70分と短いので、すぐ見終わるだろう。

ぽちっとスタート。

ふむふむ、なにやら不穏な雰囲気が充満しています。

壁に大きくうごめく影。

えー。

あっ……

あれ?

終わってしまいました。

おかしいなあ。出てきたかなあ、吸血鬼。

 

じゃあもう1回、最初から。

2度目も、やっぱり不気味で美しい映像。

ん?

あ、もしかしてこいつがそうなのか?

ははあ、なるほど。

舟をこぐシーンの神々しさ。

吸血鬼の絶命する場面のやるせなさ。

 

というわけで、なんだか実況中継みたいになってしまいましたが。

決して刺激は強くないのに、なぜかじわじわとしみこんでくるような

不気味さがあります。

 

ひとによっては、「ざけんなっ!」と放り出したくなるかもしれない作品。

「画面はきれいだったけど……」と首をかしげるひともいるかも。

でも!

どちらさんも、返却する前に、ぜひもう一度、見てみてください。

 

初回より2度目、3度目のほうが怖さが増幅するはずのこの映画。

かくいうわたしも、もう一度借りてみたいのですが、

おっかなくって、いまだに果たせていないのです……

Category : ややコワ!ご用心

チャラチャラシテルト殺ラレルゾ! ~ジョエル・シューマッカー「フォーン・ブース」(2002年)

2007-01-15 17:00:00

一発芸みたいな映画です。

おもな舞台は、ニューヨークの繁華街の公衆電話と、その周辺。

というか、ほとんどそこだけ、です。

 

コリン・ファレル演じる主人公のスチュは、

どうやら芸能エージェントのようです。

自分の利益にならない相手には、とことん冷淡。

業界志望の若者を、給料も払わずこき使う。

奥さんがいるのに、頭の中は売り出し中の女優と寝ることばかり。

ま、絵に描いたようなイヤな奴、ということになるでしょう。

 

そんなスチュ、その女優、パム(ケイティ・ホームズ)を口説くため、

とある公衆電話から彼女に電話をかけます。

電話を切った直後、鳴り出す公衆電話のベル。

ついつい受話器をとると、相手は見知らぬ男。

それなのに、彼はスチュのすべてを知っていて、次々に要求を出してくる。

 

そんなもん、無視すればよさそうなものですが、

男は照準機つきのライフルでスチュを狙っているのです。

電話を切ると殺すぞ、と脅かされ、

集まってきたひとたちやパムや奥さんに

自分の悪行を告白させられます。

「ごめんなさい、パムと寝ることばかり考えていました」

「すいません、利益にならない相手に冷淡な態度をとりました」

「申し訳ありません……」

「もうしません……」

「許してください……」

 

しかし男は許してくれない。

大騒ぎになって、警察が駆けつけてくると、

男の指示で、スチュは警察を追い払います。

チャラチャラした業界人が、公衆電話から離れることもできないまま、

どん底まで転落していきます。

電話1本でとことんまであやつられるスチュ。

 

約80分と、上映時間はかなり短く、

最後まで徹底した緊張感が持続します。

金と時間がかかった大作もいいものですが、

こうしてさりげなく面白がらせてくれる映画も捨てがたい。

 

当の相手は最後にちらっと姿を現すだけで、映画はほとんど

コリン・ファレルの熱演に支えられています。

次第にくたびれはてていく彼の名演技と、

練りに練った脚本とで、

ぴりっとひきしまっていて背筋がぞっとするようなスリラーが

できあがりました。

 

それにしても、スチュが狙われた理由が、チャラチャラしていて

礼儀をわきまえない業界人だから、というのもけっこう怖いですね。

お互い、品行は正しくしたいものです。

Category : ややコワ!ご用心

B級映画の巨匠が放つゾンビ・ウェスタン ~ジョン・カーペンター「ゴースト・オブ・マーズ」(2001年)

2007-01-10 17:00:00

大量のゾンビが、画面狭しとうようよ。

それなのに、あんまりこわくない。

いや、ぜんぜんこわくないといってもいいでしょう。

そんな映画です。

 

舞台は2176年の、火星。

殺人事件の容疑者を護送せよとの指令を受けて、

5人の警官隊がとある鉱山に派遣されます。

西部の開拓村のような、殺風景な新開地。

列車を降り立つと、金曜の夜だというのに、街には人影なし。

 

実は、封印されていた火星人の幽霊(なのでしょうか?)が、

入植している地球人にとりつき、ゾンビ化していたのです。

で、その大量のゾンビと少数の地球人との戦いを描いたこの映画……

 

とにかく、もー、ぬるい!

 

お互い、凝った作戦とか、戦略とか、ないです。

ゾンビはただ数にまかせて襲ってきたり、建物に火を放ったり。

人間は銃やダイナマイト、刃物や蹴りで応戦。

あげくのはてに、原発を爆破してゾンビを退治。

いい大人の作る映画とは思えません(ほめています)。

 

で、そのゾンビ。

なぜか顔を白く塗ったり、ハデに着飾ったり。

バックに終始流れるのは、もっさいヘヴィメタ。

意味不明のおたけび(火星語?)をあげつつ迫ってきます。

ゾンビなだけあって、一応そこそこ強いので、

仲間は次々に死んでいきます。

しかしそんなこと、この映画にとってはどうでもいいみたい。

「あ、また死んだ」くらいの感じです。

 

手に汗にぎるハラハラドキドキの展開や、

ショッキングな映像ももちろんいいものですが、

見すぎると心臓に負担がかかります。

川原での不良同士のケンカを遠くから見ているような、

こんな映画も悪くない。

「またやってるなー」程度のもんです。

 

「ゼイリブ」「遊星からの物体X」などで知られる

B級映画の巨匠、カーペンター監督が21世紀に放った

最初の作品である本作。

青山真治、蓮實重彦といったインテリ系の監督や批評家たちが

大絶賛を浴びせています。

白塗りのヘヴィメタ・ゾンビたちのどこがそんなに

彼らをひきつけるのか、考えながら見てみるのも

また一興かと。

Category : 余裕!お子様でもOK

すべての女の名前はイヴ ~ジョゼフ・L・マンキーウィッツ「イヴの総て」(1950年)

2007-01-05 17:00:00

芸能界と名がつくところ、いろいろと怖い話の宝庫のようで、

海を渡っても事情は同じ。

エンタテインメントの本場は、怖さもまたすさまじい。

とまあ、そんな映画が、今回ご紹介する「イヴの総て」です。

 

まずひとりの舞台女優、マーゴ様がおわします。

大女優ですから、良くも悪くもオーラが違う。

遅刻は当たり前だし、口は悪い。

「今度は旦那を銃でぶっ殺す役がやりたいわ~ん」

なんて物騒な注文を出す。

そんな(おっかない)彼女を演じるのは、ベティ・デイヴィス。

 

マーゴの演技にほれ込んで、来る日も来る日も劇場通い。

舞台を1日たりとも欠かさず見ている、

おぼこい演劇ファン。

そんなイヴを演じるのが、アン・バクスター。

 

あるときイヴは、ひょんなことから、

マーゴ様の付き人として働くことに。

よく気がつき、熱心に働くイヴは、ついにはマーゴ様の代役として

舞台に立つことになったのです。

 

ここでマーゴ様が激昂!

「なによ! あんな田舎娘!」

てな具合に、イヴをいびり始める。

負けずにスタァの座を目指すイヴ。

 

……と、そんな映画なのかと思います。

途中までは。

ところが、本当に怖いのは、イヴのほう。

 

よく、芸能界で成り上がるために体を与える娘、

というイメージがありますけども。

ここでのイヴは、そんなありがちな想像をはるかに越える

なりふりかまわなさ。

あの手この手で、ぐいぐいとのしあがっていきます。

 

ただし彼女ですら、安泰ではありません。

たくらみをすっかり見抜いている批評家だとか、

イヴ自身がそうだったように付き人志願にやってくる娘だとかが

彼女の周りを取り囲みます。

イヴは食い物にされず、無事生き抜いていけるでしょうか?

 

まさに「生き馬の目を抜く」という表現がぴったりの芸能界。

華やかな舞台も、板一枚剥けば、そこは地獄。

そんなおそろしさを巧みに描いています。

 

余談ですが、これ、ちょっとだけ見てみるか、とDVDをセットしたら、

2時間以上、やめられずに見終えてしまいました。

監督自身による脚本は、これでもかとばかりの、

名セリフや気の利いたやりとりのオンパレード。

「イヴの総て」でウィットに富んだ会話を学んで、

週末のパーティの人気者になりましょう。

(真に受けないように)

Category : 激コワ!覚悟はいかが?

「なつかしい」にご用心! ~原恵一「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」(2001年)

2006-12-29 17:00:00

ん? 何かの間違いか?と思われた方。いいえ、間違いではなく、あのクレヨンしんちゃんです。一部でとても評判の高いこの作品、恥ずかしながらわたしも、このあいだ初めて見たのですが、ズバリ、どーんと太鼓判。クレヨンしんちゃんなんか興味ないよ、というオトナのあなたこそ、思いっきりハマる可能性のある1本です。
 
舞台はおなじみ、カスカベ市。ここにやって来た「20世紀博」に、このごろ大人たちは夢中。万博、特撮ヒーローや魔法使いもののTV番組、といった昭和の風俗が体験できるこの博覧会にすっかり骨抜き。大人は大人でなくなり、子供たちはほっぽらかしです。これ、匂いのない21世紀を拒絶し、世界を20世紀に引き戻そうとする悪の結社「イエスタデイワンスモア」のたくらみだったのです。洗脳され、連れ去られた両親を助けるため、世界を元通りに戻すため、しんのすけたちの戦いが始まります!
 
カラーTVなのに白黒で放送された「20世紀博からのお知らせ」を見たとたん、スイッチが入ってしまい、まるで別人のようになってしまう両親の表情に、まずぞっとします。翌日、ごはんを作ってくれないママと会社に行かないパパを置いて幼稚園に向かったしんのすけが見たのは、いい大人が道端でかごめかごめをしているところ。幼稚園に着けば、子供の姿はなく、大人たちが缶蹴りの最中。しんのすけにしてみたら、こりゃ災難。と同時に、見ているわたしたちにとっては、この壊れた大人たちの姿、バカバカしいと笑い飛ばしにくいものがあって、ちょっとこわい。
 
あのころに戻りたいなあ、と感じることは、誰でもときどきはあるもので、そのへんの気持ちをちくちくと刺激してきます。それでも、いやおうなしに1年に1回、年をとっていって、後戻りはできないわけで。それが現実。なつかしのフィギアや、復刻盤のCD、ビンテージのおもちゃ。そういったものは、適度にたしなむから楽しいんですよ、のめりこみすぎると壊れちゃって、戻ってこられませんよ、ということを警告してくれます。「クレしん」、あなどるべからず、ですぞ。

Category : 余裕!お子様でもOK

とりかえしのつかないことについて ~ジャン=リュック・ゴダール&ジャン=ピエール・ゴラン「万事快調」(1972年)

2006-12-23 17:00:00

ゴダール、という名前を聞いたことがあるでしょうか。いまでも、その名前はまるで呪文のように、ひとびとのあいだを飛び交っています。まず、「難解」。そして、「オシャレ」。もしくは、「革命的」。さもなくば、「ユルコワ」。おっと、そんなことを言っているのはわたしだけみたいですが。そもそも、難解でいてオシャレ、なんてあるのかしらん。
 
ではさっそく、「万事快調」、見てみましょう。かいつまむと、こんな話です。とある惑星の、とある国(フランス)にあるカップルがいます。彼(イヴ・モンタン)は映画監督で、食べるためにCMの仕事をしています。彼女(ジェーン・フォンダ)は、ラジオ局で働くジャーナリスト。このふたり、どうもうまくいっていない様子。そんなふたりが、ある日、彼女の仕事で、食肉製造会社の社長にインタビューをしに行きます。折り悪く、その日はストの真っ最中。労働者が、社長を工場に軟禁していたのでした。ふたりも巻き添えを食って、一緒に軟禁されます。やがてふたりは、あまりにもあっけなく釈放されます。めでたし、めでたし。
 
……となればいいのですが、そうはいきません。いったんこの事件を通過してしまったふたりは、もはや以前のふたりとは別の存在なのです。同じ家に住み、同じ食事をしていても、関係は微妙な変化を遂げ、見ている先は別の場所。「覆水盆に還らず」とはこのことです。
 
思えばわたしたちも、多かれ少なかれ、このカップルと似た経験をしながら、馬齢を重ねていきます。一度起こってしまったことは、とりかえしがつかない。でも、それはそれとして、どうにかこうにか進んでいく。よく知っているつもりでも、あらためて目の前に突きつけられると、ひどくぞっとする話。まあそうした、ほとんどやるせなさだけでできあがったような映画が、この「万事快調」なわけです。じんわりとボディ・ブローのように効いてくるおそろしさ。ですから、人生の山や谷を知ってからのほうが、よーく味わえるかもしれませんね。
 
で、オシャレなのか?についてですけど。これはずばり、オシャレでしょう。とにかく画面にちりばめられた色、色、色!白と青と赤が目にまぶしい。そう、フランスの国旗の色、トリコロール。これはフランスの映画だと強烈に主張していますが、それと同時に、見ているわたしたちの映画でもあるのです。

Category : プチコワ!カップル向け

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