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幸福という名の恐怖 ~アニエス・ヴァルダ「幸福 <しあわせ>」(1965年)
2007-01-25 17:00:00 Category : 激コワ!覚悟はいかが?
「バカヤロウ」が愛の言葉だったり。
「愛してる」とささやきつつ、実は愛してなかったり。
「君には大いに期待しとるんだよ」と喜ばせといて、
水面下では左遷の準備を進めていたり(上司)。
世の中、なかなか見かけどおりには動いていないみたいですが。
この、「幸福 <しあわせ>」と題された短い映画もそんな1本。
タイトルどおり、とある一家の幸福な日常を描いています。
しかし。
これは、なかなかにおそろしい作品。
主人公は、建具屋で働く青年。
自宅で洋裁をやっている奥さんと、かわいいふたりの子供。
物語は、4人が森にピクニックに行くところから始まります。
揺れるひまわり。
暖かい日差しとさわやかな風に眠気を誘われる夫婦。
子供たちは蚊帳の中でお昼寝です。
バスケットにはパンとワイン。
これが幸福なのだ、といわれれば、なるほど、うなずくしかない光景。
あるとき、青年はよその町に出張に出かけます。
そして、そこの郵便局で勤める娘と仲良くなります。
聞けば彼女、今度、青年の住む町に転勤になるのだとか。
繰り返されるデート。
よくある話です。
さて、この映画はいわゆるミステリー、謎解きものではありませんが、
ここから先に起こったことに触れると、
これからご覧になるみなさんの楽しみと恐怖とを台無しにしてしまう
おそれがあります。
ですから、この映画で起こらないことを、いくつか書いてみます。
まず、本妻と浮気相手がはちあわせしたり、
ののしりあったりすることはありません。
登場人物が声を荒げたり、暴力を振るったりすることも一切なし。
銃も刃物も、出てきません。
血も流れません。
だましあいや、かけひきもなし。
それじゃあどこがこわいのか、と疑問に思われることでしょう。
そこはやはり、みなさんがご自分の目でたしかめていただかないと!
おしまいは、はじまりとよく似ています。
見るからに幸せそうな一家が森を訪れ、並んで歩き去っていく後ろ姿。
このうえなくのどかなラストシーン。
それでいて、見ていて背筋が凍りつくようなのでした。
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