君ほほえめば ~リチャード・ドナー「オーメン」(1976年) | Main | 幸福という名の恐怖 ~アニエス・ヴァルダ「幸福 <しあわせ>」(1965年)
本当の戦争の話をしよう ~増村保造「赤い天使」(1966年)
2007-01-30 17:00:00 Category : 激コワ!覚悟はいかが?
大ヒットを続けている、クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」。
ご覧になったみなさんも多いことと思います。
わたしも見ましたが、どうももどかしさが残りました。
アメリカ人が手袋をして握ったSushiを、
ナイフとフォークで食べさせられているような感じ。
で、今回は、日本人の、日本人による戦争映画をご紹介しましょう。
監督は増村保造。
東大を一度出たあとまた入り直し、2回も卒業した、すごいおひとです。
主演は若尾文子。
増村とは、20作品でコンビを組んでおり、そのほとんどが傑作です。
さて、この「赤い天使」、舞台は第2次大戦中の中国戦線です。
若尾が演じるのは、野戦病院の看護婦、西さくら。
前線で傷ついた兵士たちが次々に運び込まれてくる場所。
しかし、ロクにベッドもない、薬もない、人手もない。
ではどうするか?
助かりそうな者には最小限の治療をほどこし、
助からない者は、見捨てるのです。
で、その最小限の治療、とは?
体の中に入った弾を摘出したり(麻酔なし)、
壊死した手足をノコギリでギコギコ切り落としたり(麻酔なし!)。
モノクロ画面なのに、血の色が目に焼きつきそうなほど。
まるで物体のように横たわる兵士たち、
角材かなにかのように積み上げられた死体。
背筋が震えます。
そんな壮絶な日々の中、さくらは、手を失った兵士(川津祐介)の
性の処理を手伝ったり、軍医(芦田伸介)と恋に落ちたりと、
おそるべき生命力のうごめきを見せます。
ひとりの看護婦を超え、ひとりの女を超え、
それはまるで、若尾文子という一種の生物のように。
戦争ですから、バタバタとひとが死んでいきます。
兵士たちが死に、軍医が死に、目をかけていた若い看護婦が死ぬ。
それでもさくらは生き残ってしまいます。
生き延びれば生き延びるほど、それが異常な出来事であると
気付かされる場所、それが戦場なのです。
これに比べれば、イーストウッドの描く戦争は、
さしてこわくない、ママゴトの世界のように思えてきます。
わたしはさっき、「日本人の、日本人による戦争映画」と書きました。
この映画を、そしてほかの数々の日本の戦争映画を、
「日本人のためだけのもの」にしておくのはもったいないし、
また、よくないことだ、と強く感じます。
footer ads here Powered by ちびログ
footer ads here


